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馬の文献:喉嚢蓄膿症(Hawkins et al. 2001)

「慢性蓄膿症の治療のためNd:YAGレーザーによる耳管憩室(喉嚢)の瘻孔形成が行われた馬の二症例」
Hawkins JF, Frank N, Sojka JE, Levy M. Fistulation of the auditory tube diverticulum (guttural pouch) with a neodymium:yttrium-aluminum-garnet laser for treatment of chronic empyema in two horses. J Am Vet Med Assoc. 2001; 218(3): 405-407.

この研究論文では、慢性蓄膿症(Chronic empyema)の治療のため、Nd:YAGレーザー(ネオジウム・ヤグ・レーザー:Neodymium:yttrium-aluminum-garnet laser)による耳管憩室(Auditory tube diverticulum)(喉嚢:Guttural pouch)の瘻孔形成(Fistulation)が行われた馬の二症例が報告されています。

患馬は、四歳齢のクォーターホース牝馬(Mare)、および二十一歳齢のアメリカン・ポニー去勢馬(Gelding)で、いずれも内科的療法(Medical treatment)に不応性(Refractory)を示した慢性蓄膿症の治療のため来院しました。治療では、枠場(Stocks)の中で鎮静(Sedation)および保定(Restraint)された後、内視鏡(Endoscopy)を介して喉嚢の咽頭開口部(Pharyngeal orifice)に局所麻酔(Local anesthesia)が塗布されました。そして、チェンバーカテーテルの中を通してNd:YAGレーザーを咽頭へと到達させて、咽頭開口部軟骨(Cartilage of the right pharyngeal orifice)および耳管咽頭襞(Plica salpingo-pharyngea)を、レーザー焼烙(Laser ablation)を介して切開することで、喉嚢への瘻孔形成が施されました。その後、治癒の過程で瘻孔が塞がらないよう、切開部から喉嚢内へとFoleyカテーテルが留置されました。

術後には、カテーテルを通して一日一回の喉嚢洗浄(Guttural pouch lavage)が五日間にわたって行われ、手術から二週間目の内視鏡検査では、堅固な瘻孔形成が達成され、喉嚢内の浸出物が全て排出されている事が確認されました(この時点でカテーテルが除去された)。二頭の患馬はいずれも、症状再発(Recurrence of clinical signs)を起こすことなく、手術から二年半および三年経った論文発表時まで、良好な予後(Good prognosis)を示したことが報告されています。このため、慢性の喉嚢蓄膿症の罹患馬において、内科的治療が奏功せず、難治性の浸出液排出が見られる場合には、レーザー焼烙による喉嚢への瘻孔形成を施すことで、充分な病巣治癒と良好な予後が達成できることが示唆されました。今回の術式では、通常の外科的療法と異なり、全身麻酔(General anesthesia)を要せず、脳神経の医原性損傷(Iatrogenic damage of cranial nerve)を引き起こす危険性が低い、等の長所が挙げられています。

この研究では、Nd:YAGレーザーによって、咽頭開口部軟骨のうち腹側の三分の二が焼烙されましたが、二次性の熱性壊死(Secondary thermal necrosis)などの術後合併症(Post-operative complication)を伴うことなく、堅固な瘻孔の形成と、浸出液の排出が見られました。同様の術式は、喉嚢鼓張症(Guttural pouch tympany)の罹患馬にも応用されており、良好な治療成績(この場合には空気の排出)が示されています(Tate et al. Vet Surg. 1995;24:367)。しかし、過去の文献の症例、および今回の研究の二症例は、いずれも競走馬ではなかったため、もし同様の手術が、高速運動(High-speed exercise)を要するサラブレッド競走馬に応用された場合には、上部気道の動的平衡(Upper airway dynamic equilibrium)を妨げて、競走能力に有害作用(Adverse effect on racing performance)を及ぼす可能性は否定できない、という考察がなされています。

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