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馬のボロ食いを止めさせる7つの対策

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馬がボロ食いをしてしまって、対策に困っているホースマンもいらっしゃるかもしれません。

馬のボロ食い(食糞)は、子馬では正常な行動であり、理由としては、ミルクから草へと食べ物が変わっていく時に、必要な腸内細菌叢を、母馬のボロから獲得するためと言われています。しかし、五ヶ月齢を越えた馬が、常態的にボロ食いをする場合には異常行動と見なされ、原因となる栄養問題や健康問題があると考えられます。ここでは、此処の原因に応じた対策を紹介します。

参考資料:
PetMD Editorial. Eating of Non-food Items in Horses; Coprophagy in Horses. Pet MD, Disease A-Z.
Simone Tuten. Nine reasons why horses eat manure. Positive Pets, Horse Behavior, Jun15, 2018.
Four Reasons Why Horses Eat Poop - And What You Can Do About It! Equestrian Co.



原因と対策1:繊維質が不足している場合

馬の飼料中に繊維質が足りないと、ボロ食い行動を示すことが実証されており[1]、牧草地での自由採食に変更するとボロ食いが止まったというデータもあります[2]。このため、ボロ食いをする馬に対しては、十分な量の良質な粗飼料(乾草、ヘイキューブ、牧草サイレージ等)を与えて、繊維質不足を解消することが推奨されます。普通に騎乗使役されている500kgの馬では、一日の総給餌量は約10kg(体重の2%)で、そのうち粗飼料は7.5kg(体重の1.5%)を占めるのが適切だとされています。



原因と対策2:摂取エネルギー量が不足している場合

給餌飼料に含まれるエネルギー量が足りない場合にも、馬はボロ食い行動を取ることが知られていますが[3]、一方で、澱粉の摂取量が多いとボロ食いをしやすいという知見もあります[4]。このため、ボロ食いする馬への給餌エネルギー量を増やそうとする時には、澱粉の多い大麦やオーツではなく、ペレットなどの配合飼料またはオイルを給餌することが推奨されています。



原因と対策3:給餌回数が少なすぎる場合

飼い付け回数が少ないと、給餌と給餌のあいだに馬が退屈さを感じて、ボロや敷料を食べるようになる、というデータが示されています[5]。このため、ボロを食べてしまう馬に対しては、飼い付けの間隔を短くして回数を増やすことが有用であり、それが難しい場合には、ゆっくりと乾草を給餌できるような入れ物(スローフィーダー)に入れて給餌することで、馬がより長い時間を給餌に費やすようにする管理法改善が有効だと言われています。



原因と対策4:腸内細菌叢のバランスが崩れている場合

馬の消化器官には、バランスと取れた腸内細菌叢の働きが不可欠です。このため、季節の変わり目や、競技シーズンでの運動量増加で体力が低下したり、フレグモーネの治療などで抗生物質が投与された時には、腸内細菌叢のバランスが崩れてしまい、それを補おうとボロを食べる行動を取ることがあります。対策としては、休馬日を増やして体力回復を図りつつ、プロバイオティクス投与で腸内細菌叢を補充することが推奨されます。



原因と対策5:馬が退屈している場合

馬がボロ食いをする要因として、単に、馬房内での退屈しのぎの場合もあると言われています。対策としては、騎乗時間以外にも、出来る限り馬を放牧に出して、馬房で退屈になる時間を減らすのが有効です。また、休馬日でも完休させずに曳き馬をしたり、馬房に遊び道具を設置したり、ポニーやミニチュアホースであれば2頭飼いをする、なども良いアイデアです。



原因と対策6:馬が健康上の問題を持っている場合

過去の文献では、馬がミネラル欠乏症、ビタミンK欠乏症、寄生虫感染、馬運動ニューロン病などを患っていると、ボロ食いになることが多いと言われています[6,7]。ですので、健康上の問題を精査するため、獣医師による健康診断を受けるのが望ましく、寄生虫がいれば駆虫剤を投与します。また、馬自身がミネラル不足を解消できるように、馬房内に岩塩を設置したり、サプリメントを飼料添加するのも有効です。



原因と対策7:馬が咀嚼不良を起こしている場合

斜歯や階状歯など、歯科的な問題を患った馬では、咀嚼不良から消化吸収作用の低下を招いて、摂取エネルギー不足になってしまい、ボロ食いをするようになると言われています。このため、ボロ食いをする馬は、年1~2回は歯科検査を依頼して、必要な整歯処置を実施してもらうのが有益です。



ボロ食いする馬で重要なこと

馬がボロ食いを始めるときには、上述のような幾つかの要因があり得ますが、馬がボロ食いすることに慣れて悪癖化してしまうと、それを止めさせるのは困難になります。ですので、ボロ食い行動に気付いたときには、上述の諸対策を取るのに併行して、その馬の馬房は一日に何回もボロ拾いをして、物理的にボロ食いをする機会を無くしておくことが大切です。

関連文献
[1] Furr, M. and Reed, S. (eds) (2008 ) Equine neurology. Blackwell Publishing.
[2] Boyd, L. E. (1988) Time budgets of adult Przewalski horses: effects of sex, reproductive status and enclosure. Applied Animal Behaviour Science 21: 19-39.
[3] Waring, G. H. (2003) Horse Behavior (2nd ed). Noyes Publications/William Andrew Publishing.
[4] Hothersall, B and Nicol, C (2009) Role of diet and feeding in normal and stereotypic behaviors in horses. Veterinary Clinics: Equine Practice 25: 167-181.
[5] Harris, P. A., Ellis, A. D., Fradinho, M. J., Jansson, A., Julliand, V., Luthersson, N., Santos, A. S. and Vervuert, I. (2017) Review: feeding conserved forage to horses: recent advances and recommendations. Animal 11(6): 958-967.
[6] Divers, T. J., Mohammed, H. O., Cummings, J. F., Valentine, B. A., De Lahunta, A., Jackson, C. A. and Summers, B. A. (1994) Equine motor neuron disease: findings in 28 horses and proposal of a pathophysiological mechanism for the disease. Equine Veterinary Journal 26(5):409-415.
[7] Geor, R. J., Harris, P. A. and Coene, M (eds) (2013) Equine applied and clinical nutrition. Saunders Elsevier.

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