馬のBCSと体重計算法
馬の飼養管理 - 2022年08月03日 (水)

馬のボディ・コンディション・スコア(BCS)について
競技馬や競走馬の体重を適正に管理することは、馬の飼養管理法のなかでも、最も大切な要素の一つであると考えられます。また、高齢馬の削痩や、ポニーの肥満など、注意深く体重管理をする必要がある個体も多いと言えます。そして、馬の体重や体格の変化をモニタリングする指標として有用なのが、ボディ・コンディション・スコア(BCS: Body condition score)と呼ばれる体格の点数化システムです。馬のボディ・コンディション・スコアとしては、Henneke式の点数化システムが最も頻繁に用いられており、馬の用途(競走馬、乗用馬、繁殖馬、etc)、品種、年齢などに応じて、スコアの正常範囲が提唱されている場合もあります。
このHenneke式のシステムでは、馬体の各部位を個別に評価して、それを総合的にスコア化するため、ただ漠然と馬体を見て「太っている」とか「痩せている」と表現するよりも、より正確に体格の変化を判断することができる、という利点があります。評価する馬体の箇所としては、棘状突起(Spinous processes)、肋骨(Ribs)、尾根(Tailhead)、腰椎横突起(Transverse processes of lumbar vertebrae)、寛結節(Tuber coxae)、坐骨結節(Tuber ischii)、キ甲(Withers)、肩(Shoulder)、頚部(Neck)、内股(Inner thighs)、横腹(Flank)などが含まれます。また、各部位の評価を別々に表記したシステムもあります。

スコア1:Poor(“非常に悪い体格”)
重度にやせ衰えていて(Extremely emaciated)、棘状突起、肋骨、尾根、寛結節、坐骨結節などが、顕著に突出(Projecting prominently)しており、キ甲、肩、頚部などの骨格が容易に目立ち(Easily noticeable)、脂肪はどこにも触知されない。
スコア2:Very thin(“とても痩せている”)
やせ衰えていて(Emaciated)、僅かな脂肪のみが棘状突起の基部に見られ、腰椎横突起は丸く触知される。棘状突起、肋骨、尾根、寛結節、坐骨結節などは突出しており、キ甲、肩、頚部などは僅かに認められる(Faintly discernable)。
スコア3:Thin(“痩せている”)
脂肪は棘状突起の下半分まで付き、腰椎横突起は視認されない。少しの脂肪が肋骨を覆い、棘状突起と肋骨は容易には視認されず(Easily discernable)、尾根は突出しているものの、各椎体は視認できない(Individual vertebrae cannot be visually identified)。寛結節は丸く容易に認められるが、坐骨結節は識別されない(Not distinguishable)。キ甲、肩、頚部などは目立って見える(Accentuated)。
スコア4:Moderately thin(“やや痩せている”)
背中は凸状に見られ(Negative crease along back)、肋骨の僅かな輪郭(Faint rib outline)が確認される。尾根部の突出は体型によって様々で、その周囲に脂肪が触知される。寛結節は視認されないものの、キ甲、肩、頚部などは明らかに痩せて見えはしない(Not obviously thin)。
スコア5:Moderate(“普通”)
背中は平坦で(Back level)、肋骨は見た目上認められないものの(Cannot be visually distinguished)、容易に触知される(Easily felt)。尾根部の脂肪はスポンジ状に触知されはじめ、キ甲は棘状突起の上部に丸く見られ、肩や頚部は体幹から突出していない(Blend smoothly into body)。
スコア6:Moderately fleshly(“少し肉付きがよい”)
背中は僅かに凹状に見られるものの、肋骨周辺の脂肪はスポンジ状に触知され、尾根部の脂肪は柔らかく触知される。キ甲、肩、頚部などの周辺に脂肪が付き始める。
スコア7:Fleshy(“肉付きがよい”)
背中は凹状に見られることもある。各肋骨は触知できるものの、肋骨間の脂肪が認められはじめる。尾根周辺の脂肪は柔らかく、キ甲、肩、頚部などの周辺に脂肪が付いている。
スコア8:Fat(“太っている”)
背中は凹状を呈し、肋骨を触知するのは困難になり、尾根周辺の脂肪は非常に柔らかくなる。キ甲周辺には脂肪が見られ、肩周辺も脂肪で覆われる。顕著な頚部の肥厚が認められ、内股にも脂肪が付いている。
スコア9:Extremely fat(“非常に太っている”)
背中は明らかに凹状を呈し、肋骨に沿って斑状脂肪(Patchy fat)が見られ、尾根、キ甲、肩、頚部などに脂肪が蓄積している。両後肢の内股に付いた脂肪は互いに触れ始め、横腹(Flank)は脂肪で覆われている。

馬の体重計算式について
馬体の状態を表す指標としては、BCS以外にも、馬体の特定部位の長さから体重を計算する式も用いられています。ここで使われる長さは、「胸囲」と「体長」になり、定義は以下の通りです。胸囲は「キ甲のすぐ後ろと腋窩を通る胸部周囲の長さ」で測定し、体長は「肩端から臀端までの長さ」となります。
そして、この2つの測定値を使うと、馬の体重は以下の公式で計算されます。なお、この計算式は成馬のもので、子馬の場合には、最後の11,880の代わりに8,700を使います。また、自分で計算するのが面倒な場合には、海外サイトにある馬体重のオンライン電卓を使うことも出来ます。
体重[kg] =(胸囲[cm]×胸囲[cm]×体長[cm])÷ 11,880
一方、馬の胸囲を測りながら体重を示してくれる、ウェイトテープ(下記リンク)も市販されていますが、これは体長を考慮しないため、上記の計算式よりは実測値とのバラつきが大きくなり易いと言われています。
Tough 1 Sure Measure Horse and Pony Height/Weight Tape
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参考文献:
Henneke DR, Potter GD, Kreider JL, Yeates BF. Relationship between condition score, physical measurements and body fat percentage in mares. Equine Vet J. 1983; 15(4): 371-372.
Casie Bazay. Estimating Horse Weight Accurately. The Horse, Topics, Body Condition, Vital Signs & Physical Exam: Sep15, 2011.