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馬のオンライン診療のための写真や動画の取り方

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馬のオンライン診療について

馬が跛行や外傷をして、獣医師に電話をする場合、昔は、言葉で説明するだけでしたが、近年では、画像や動画が簡単に送れるようになってきました。また、ここ数年のコロナ禍で、ヒトのオンライン診療が普及するなか、馬の獣医療でもオンライン診療をする割合が増えたと言われています。そんな中、機械にうとかったホースマンも、スマホの使い方を覚えて、写真や動画を介して獣医師の診断や治療の指示を受ける、という場面が多くなったのではないでしょうか。

しかし、その写真や動画の質が悪いと、獣医師が正確に病態を把握できず、適切な指導が出来なかったり、治療が遅れてしまう可能性もあります。ここでは、馬のオンライン診療にために、獣医師に写真や動画を送るときに役立つ撮影方法について紹介します。

参考資料:
Wendy Krebs. 5 Tips for Taking Photos to Send to Your Equine Veterinarian. The Horse, Jan13, 2022.
Allison A Rehnborg. Virtual Veterinary Care for Horses. Horse Illustrated, Jun1, 2021.
Bob Grisel. Equine Telehealth: It’s just beginning. Equine America.



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オンライン診療のための写真の取り方

馬のオンライン診療のための写真を撮るときには、光の量が充分であることと、逆光になっていないことが大切です。一般的に、馬を撮るときには、可能な限り屋外で、太陽を背にして、撮影部位に影が差していない状態が理想です。ただ、どうしても夜間に、暗い馬房内で撮影するときには、懐中電灯などで光を当てて撮るものと、当てずに撮るものの両方を試してみましょう。明るさ補正が優れているカメラでは、むしろ後者のほうが、対象を鮮明に撮れる場合もあります。また、カメラのフォーカスを対象物に合わせて撮影することも必須ですので、撮った写真を一度拡大して見てみて、ピントが合っているかを確認するのが良いと思います。

馬が外傷や皮膚病になった時に、その病変を撮影することもあるかと思いますが、その際には、血液を拭き取った状態で撮影し、病変を拡大した画像と、肢や馬体の全体を写した画像の両方を撮るようにしましょう。大きさの目安となる物体(1円玉など)を一緒に撮るのも良いアイデアです。また、腫れてしまった肢や肢の一部を撮るときには、少なくとも2方向から撮影した画像があるのが望ましく、反対の肢が写っている引きの画像もあると、左右肢の比較ができて診断の一助になります。

眼が腫れてしまった馬では、特に写真を撮るのが難しく、眼のアップと顔全体を撮った画像に併せて、まぶたを少し持ち上げて、結膜と角膜の状態が分かる写真があるのがベストです。このときは、2名で撮るのがコツです。ただ、眼の疼痛が強いと、馬が暴れて怪我をするリスクもあるので注意しましょう。一般的に、カメラが眼に近づくと、まぶたを固く閉じてしまう馬が多いので、角砂糖などをあげながら、少し遠めから撮影すると成功しやすいです。



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オンライン診療のための動画の取り方

馬が跛行したり、継続的に歩様チェックをする時には、馬の動きを動画で撮ることになります。馬を曳いて撮る場合には、直線上を曳きながら、必ず、馬の真正面および真後ろから撮影をして、常歩で1往復、速歩で2往復ほど撮るのが望ましいです。この際には、歩様スピードは一定に保ち、曳き手を少し余らせて持ち、馬の頭の動きを妨げないようにします。直線の距離は20~25メートルで、速歩を7~8歩は踏むようにします。馬をターンさせる時は、右回転と左回転の両方をさせます。ただ、常歩を嫌悪するほど跛行が重い場合には、馬房から出さず、馬房内で旋回する様子などを撮影した動画を送るのが良いと考えられます。

また、馬に騎乗しながら撮る場合には、直線、右回転、左回転の3つ(それぞれ常歩と速歩を含む)があるのが望ましいと言えます。直線は、蹄跡ではなく中央線にて、やはり真正面と真後ろから撮ります。回転運動では、小さめの輪乗りで(直径10~15m)、手綱を伸ばして頭頚部の動きを自由にして、ツーポイントでの歩様を撮るのがベストです。馬には、真っすぐ正面を向かせ、内方姿勢は求めません(腰や肩を逃がす動作も診断に役立つ)。これを、左右手前でおこない、各手前で常歩1周、速歩3周ほど撮影します。歩様スピードは、少し遅めのほうが跛行は見やすいので、前進気勢は求めません(踏み込みや蹄弧の左右差も診断に役立つ)。通常、駈歩は必要ありません。なお、調馬索での回転運動でも、同様に撮影するようにします。

そして、跛行以外でも、疝痛馬の疼痛症状を動画で見ることで、馬の動作や仕草などから痛みの重篤さを判断しやすくなるケースも多々あります。また、喘息での呼吸様式、神経疾患での腰フラ症状、歯科疾患での咀嚼の仕方、異常な排尿姿勢なども、動画を見ることによって診断の一助になることがあります。さらに、馬の眼が腫れてしまったケースでも、眼瞼を持ち上げて写真を撮ろうとしても、シャッターのタイミングが合わないことも多いため動画が有用ですし、眼を触られた際の痛みの重さや、視力についても評価できます。



残念ながら、写真や動画での診察は、どんなに撮影法が適切でも、獣医師が直接的に馬を診ることには及びません。ですので、オンライン診療は定期的に繰り返し、病態の急激な悪化等を見逃さないようにする事が重要だと言えます。

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