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馬の年齢を歯で当てよう

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切歯の生え変わりでの年齢判定

馬の年齢を、歯を見ただけで当てる方法は、古来より、ホースマンの基本的スキルとして実施されてきました。通常、切歯の視診による馬の年齢判定は、上下顎切歯の乳歯の脱落(Shedding)、下顎切歯の咬合面(Occlusal surfaces of mandibular incisors)、および、上下切歯を横から観察することによって行われることが一般的です(上表)。

このうち、切歯における脱落歯(Deciduous teeth)から永久歯(Permanent teeth)への生え変わりは、最も見つけやすい年齢判定の指標と言えます。一般的に、切歯が永久歯に生え変わる時期は、第一切歯では三歳前後、第二切歯では四歳前後、第三切歯では五歳前後だとされています(下記写真)。

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切歯の咬合面を見たときの年齢判定

歯星(Dental stars)は、切歯の口唇端(Labial edge)と歯杯(Dental cups)のあいだに位置する黄色~茶色の組織です。一般的に、歯星の出現時期は、第一切歯では五歳、第二切歯では六歳、第三切歯では七歳~八歳です。また、歯星の内部には、三次象牙質の核(Tertiary dentin core)とそれを取り囲む二次象牙質層(Secondary dentin layer)からなる白点(下記写真の黒矢印)が認められ、この白点の出現時期は、第一切歯では七歳~八歳、第二切歯では九歳~十一歳、第三切歯では十一歳~十三歳であることが一般的です。

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歯杯は、切歯内にエナメル質が漏斗状に陥入(Infundibular enamel infolding)している組織を指します。一般的に、歯胚の消失時期は、第一切歯では六歳~七歳、第二切歯では七歳~十一歳、第三切歯では九歳~十五歳と言われています。また、歯印(Dental mark)は、セメント質から成る切歯の核(Cement core)を指し、この歯印の消失時期は、第一切歯では十八歳前後、第二切歯および第三切歯では十九歳~二十歳であることが一般的です。

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下顎切歯の視診による馬の年齢判定では、咬合面全体の形も有効な指標となり、加齢に伴って、楕円→台形→舌尖のように変化していきます。第一切歯の咬合面の形は、六歳以下では楕円形(Oval)、七歳~八歳では台形(Trapezoid)、九歳以上では舌尖(Lingual apex)(上記写真の黒矢印)をもつ台形を示すことが一般的です。また、第二切歯の咬合面の形は、七歳以下では楕円形、八歳~九歳では台形、十歳以上では舌尖をもつ台形を示すことが一般的です。一方、第三切歯の咬合面の形は、十歳以下では楕円形、十一歳以上では口唇尖形(Labial apex)(上記写真の白矢頭)を示すことが一般的です。



切歯を横から見たときの年齢判定

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切歯を横から見たときに、上下切歯の前面が作る角度は、若齢馬では約180°ですが、加齢に伴ってこの角度は減少していきます。切歯前面の角度変化に伴って、上下切歯の咬合面に差異が生じると、上顎第三切歯のコーナーに鉤状突起(Hooks)が形成されることもあり(上記写真の白矢印)、通常、この鉤状突起は五歳以上の馬において見られます。

一方、上顎第三切歯には加齢に伴って、ガルバイン溝(Galvayne’s groove)と呼ばれる濃いセメント質を含む溝が形成されることもあり(下記写真の黒矢印)、通常、このガルバイン溝は十一歳以上の馬において見られます。

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欧米諸国では、牧馬(まきうま)で繁殖される子馬も多いため、誕生日が不祥な馬の個体登録や取引をするために、歯を見るだけで年齢を推定するスキルが重要視されてきました。幸いにも日本では、繁殖馬の個体管理は厳格であり、馬の売買における詐称なども殆ど起きないため、歯を見て年齢判定することの重要性は高くありませんが、馬の取扱者の基礎技能として練習してみると楽しいかもしれません。

Photo courtesy of Baker GJ and Easley J. Equine Dentistry. 2005, Elsevier Saunders, St Louis, Missouri (ISBN: 0-7020-2724-3).

参考資料:
Maria Soltero-Rivera. Dentition and Dental Nomenclature of Animals. MSD Veterinary Manual, Sep, 2021.
Emily Fought. Estimate Your Horse’s Age By His Teeth. Cowgirl, Recent News, Aug9, 2017.
Wayne Loch, Melvin Bradley. Determining Age of Horses by Their Teeth. MU Extension, Dept of Animal Sciences, University of Missouri.

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