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馬の息労:厩舎ダストを減らす7つの対策

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馬の息労について

馬の息労は、回帰性気道閉塞(Recurrent airway obstruction)とも呼ばれ、カビや粉塵などのアレルゲンを吸い込むことで、気管支のアレルギー反応を起こして、頻呼吸や発咳を生じる病気です。一般的に、厩舎ダストに過敏体質な高齢馬に発症しますが、類似病態としては、若い馬に起こる炎症性気道疾患(Inflammatory airway disease)や、屋外のアレルゲンに起因する夏季牧草関連性閉塞性肺疾患(Summer pasture-associated obstructive pulmonary disease)という病気もあります。

息労の馬が呼吸困難を起こした場合には、抗炎症剤や気管支拡張剤を内服させたり、エアロゾル化した薬剤をネブライザーで吸引させる治療も行なわれています。しかし、息労発作を繰り返して肺組織の持続的損傷と線維化が蓄積すると、間質性肺炎へと悪化して、致死的な呼吸不全を続発して予後不良となってしまいます。このため、薬剤治療はあくまで補助的な対策であると認識すると同時に、厩舎ダストを減らす対策を取るなどの飼養管理の改善によって、息労発作の予防に努めることが重要です。

参考資料:
Christine Barakat. Owners play a key role in equine asthma management. EQUUS, Jul15, 2022.
Erica Larson. Treating Equine Asthma, From Mild to Severe. The Horse: Mar4, 2022.
"Jade Harding. Equine Asthma – How can I manage it? ScarsdaleVets: Mar11, 2021.



厩舎ダスト対策1:飼料や給餌法の変更

実は、厩舎ダストの最も大きな出処は、馬が食べている粗飼料になります。生の青草と比べて、ドライフード化された乾草やヘイキューブは、粉塵が出やすくカビ胞子の含有量も高いうえ、馬が鼻先で触れている時間が長いため、息労の病因となる厩舎ダストとして影響が大きくなります。対策としては、乾草やヘイキューブを湿らせてから給餌すること、および、牧草ヘイレージに変更すること、等が挙げられます。ただ、湿った粗飼料は嗜好性が落ちやすく、夏場は雑菌が増えやすいというデメリットもあります。

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厩舎ダスト対策2:敷料の変更

厩舎ダストの出処としては、敷料も重要であり、特に、麦ワラや稲ワラでは粉塵の量が多いことが知られています。このため、敷料をワラからウッドチップに変更するだけで、厩舎ダストの量を1/10に減少できると言われています。ただ、日本の敷料に多いオガ屑は、その組成によって粉塵量が様々であり、ノコギリ屑の方がカンナ屑より粉塵が多く、また、産廃屑になるとアレルゲンとなる化学物質を含むケースも多いと言われています。

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厩舎ダスト対策3:換気を良くする

馬が吸引する厩舎ダストを減らすには、馬房の換気を良くすることも重要です。具体的には、息労の馬は厩舎の出入り口に近い馬房に移すこと、可能な限り馬房の扉や窓を開放すること、馬房扉を柵だけの形状に変更すること、馬房に換気扇を設置すること、等が挙げられます。理想としては、厩舎ダストを減らすためには、毎時4~8回は全換気されるのが好ましいと提唱されています。

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厩舎ダスト対策4:ホコリが立つときは息労馬を避難させる

日々の厩舎作業の中には、止むを得ずホコリが立つものもありますが、その時だけは、息労の馬を厩舎から出すのも一案です。対策としては、馬房掃除、通路の掃き掃除、飼料や敷料を搬入する時間帯などには、息労馬を放牧場や蹄洗場に出しておくことが有効だと言われています。

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厩舎ダスト対策5:厩舎のホコリを根本的に減らす

息労の馬がいる厩舎では、粉塵を根本的に減らす方策が取れることもあります。具体的には、屋根裏や馬房の上のスペースに飼料などを収納している場合には、それら全てを別の建物に移動させること、通常は年一回の大掃除を年3~4回実施して落下粉塵を減らすこと、馬房内ではブラシ掛けをしないこと、および、可能であれば、息労の馬は屋根の高い厩舎に移動させること、等が挙げられます。

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厩舎ダスト対策6:スローフィーダーで給餌をする

馬の気道に入り込む粉塵は、気管内壁の粘液絨毛エスカレーターによって体外に排出されますが、その作用は、頭部を下垂させている姿勢(気道が下り坂になっている状態)のほうが、より効率的に働きます。このため、飼料をスローフィーダーで給餌して、一日のうち馬が床面からエサを食べている時間が長くなれば、気管内に入る粉塵の量を大幅に減らすことが可能になります。

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厩舎ダスト対策7:放牧飼いに変更する

厩舎ダストを減らす最も思い切った方策は、厩舎で飼養するのを止めて、放牧飼いに変更することになります。息労の馬のために、専用の放牧場を整備(雨除け屋根、水飲み場、飼い付け場所など)するのは大変かもしれませんが、厩舎ダストが病因である場合には、一番効率的な対策になるケースも多いと考えられます。また、完全に舎飼いを止めるのが難しい場合でも、可能な日には一日12時間以上放牧することで、息労発作をリスクを大きく減らせると提唱されています。

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馬の息労の病因となる厩舎ダストを減らすためには、ヒトの喘息と同じように、多方面にわたるホコリ対策を、根気強く持続的に実施する必要があります。そういう意味では、息労馬の飼養管理においては、ホースマンの順守性が大事だという提唱もなされています(Simoes et al. J Eq Vet Sci. 2020;87:102937)。

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