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馬の結腸の生存能検査

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馬の結腸の生存能検査について

馬の結腸捻転では、捻じれた箇所より遠位側に虚血性壊死を生じて、結腸の切除および吻合術が必要となるケースもあります。しかし、その際には、術中に腸管の生存能を判定して、切除吻合術を行うか否か、また、そのまま安楽死処置を選択するかを判断する必要があります。しかし、罹患部位の漿膜面の色、および、骨盤曲切開部の粘膜の色などに基づく腸管生存率は、約50%の信頼性しかないことが示されています。このため、結腸捻転の手術症例における術後の生存率を的確に予測するため、術中に結腸の生存能を判定するための様々な検査法が試みられています。



術中病理学診断による生存能検査

術中における病理学的診断では、50%以上の腺上皮が死滅していたり、間質層と腺窩層の比率が3:1以上である症例では、95%の致死率を示すことが報告されています。しかし、通常の病理組織検査は時間が掛かり過ぎるため、凍結検体を用いた術中病理検査が応用されています。この際、骨盤曲を切開した部位の検体では、結腸全体の損傷度を正確には反映できないため、結腸切除及び吻合術を実施された箇所の検体を用いることで、より信頼性の高い生存能の判定が可能性になると考えられています。下記写真では、1:腺窩層、2:間質層、3:漿膜層、が示されています。

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血流障害の判定による生存能検査

ドップラー超音波検査および蛍光色素による血流阻害の判定は、侵襲性が少なく短時間での実施が可能で、術後の虚血壊死の危険を予測するのに有効な検査法です。そして、小腸絞扼においては、88%(ドップラー超音波)および53%(蛍光色素)の信頼性で、腸管の生存能を判定できることが示されています。しかし、術前に起きていた血流阻害の経過によっては、手術後に虚血再灌流傷害を続発して、良好な血流の維持が確認された症例でも、腸管の生存能が必ずしも芳しくなくなる可能性も指摘されています。

また、暗視野検鏡の機器を用いることで、術中に結腸漿膜面の鏡検を行ない、微細血管灌流指数を算出することで、結腸の血流阻害の重篤度を、毛細血管のレベルで評価する手法も試みられています。しかし、微細血管の灌流は、主要脈管の血流障害と完全に比例する訳ではなく、また、捻転で腸壁が肥厚している場合には、漿膜面の鏡検では腸壁全体の病態を把握できない可能性も懸念されています。

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表面酸素濃度や結腸内圧による生存能検査

表面酸素測定による組織酸素化の判定では、20mmHgの酸素濃度を基準値とすることで、88%の信頼性で腸管の生存能を予測可能であることが示されています。しかし、表面酸素濃度は、結腸の各部位で均等ではないため、数箇所の測定値のみで腸管全体の生存能を判定することの限界が指摘されており、また、術後に内毒素血症や凝血異常を続発した症例では、術中の全身麻酔下における組織酸素化と、術後の結腸組織の酸素化が必ずしも相関しない可能性もあります。

結腸内圧の測定による生存能判定では、内圧上昇が粘膜面損傷に相関すると考えられており、実験的には38cmH20を基準値とすることで、89%の感度で腸管の生存能を推測できることが報告されています。しかし、実際の症例では、実験モデルよりも遥かに長時間にわたる結腸捻転の経過を示すことから、生存可能な症例においても、実験上の数値よりも低い結腸内圧を示すことが予測されています。このため、結腸内圧測定法の有用性については、臨床症例を用いての成績を調べることが必要であることが示唆されています。



結腸の生存能検査で重要なこと

馬における結腸の生存能を判定する難しさとしては、迅速に実施できる手法でなければ、開腹術の最中に応用するのが困難であるという点があります。また、実際の臨床症例の生存確率には、全身性炎症反応の重篤さなど、腸管の病的状態以外の要素も関与するため、生存能の指標と術後の生存率の相関を見るためには、多数の症例における治療成績を解析する必要があります。その意味でも、多くの開腹術の現場で、簡易かつ迅速で、安価に行なえる手法を臨床応用して、信頼性の高い生存能の判定指標を確立させていくことが大切になってくるのかもしれません。

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