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馬を夜間だけ放牧させるメリット

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馬の夜間だけ放牧させることの利点について紹介されています。

一般的に、厩舎飼いされている馬であっても、一定の時間を放牧場で過ごすことで、馬房で退屈する時間が減らせるため、気性や性格が温和になったり、サク癖や熊癖などの悪癖を予防できるというメリットがあります。また、牧草地に放すことが可能であれば、新鮮な青草を摂取させることが可能となって、ミネラルや電解質の不足を補って健康状態の向上につながるだけでなく、特に、歯の問題を患った高齢馬では、柔らかい生草を主食とすることで、疝痛や削痩を防げるという利点があります。

馬を夜間だけ放牧させるのは、熱射病を避けるのに有効です。夏場では、暑さの厳しい日中を避けて、夕方から翌朝までを放牧時間にあてることで、暑熱がもたらす疾患を失敗することなく、放牧による気分転換を促すことが可能になります。注意する点としては、たとえ夜間であっても、馬はかなりの距離を歩き回って体温が上がることも多いため、十分な飲水量を提供しておくことが必須です。また、蚊による刺し傷から馬体を守るため、虫除けスプレーを塗布することも有用です。

夜間だけ放牧するもう一つのメリットは、クッシング病(別名:下垂体中葉機能異常症、Pituitary pars intermedia dysfunction)などの代謝系疾患を患った馬においてです。一般的に、植物の日内サイクルによると、牧草に含まれる糖分は夜間に下がり、午前3時頃に最も少なくなると言われていますので、この時間帯を放牧に当てることで、良質な青草を与えつつも、糖質や澱粉の過多からインスリン制御異常を生じてしまうのを防ぐことが出来ると言われています。この場合、青草があまり短くならないように注意すること(地面から8~9cmの部分の牧草は糖分濃度が高いため)、および、気温4℃以下になったら夜間放牧を止めること(この気温以下だと牧草の糖分含有量が増加するため)に留意しましょう。

馬を夜間だけ放牧する方法は、人の目が届きにくい時間帯である点は心配かもしれませんが、上述のような利点を享受できる馬に対しては、試しに行なってみる価値は十分にあるのかもしれません。

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関連記事:
・馬のクッシング病の経過評価について
・「青い光」で馬のクッシング病対策
・馬の病気:クッシング病

参考資料:
Alayne Blickle. The Benefits of Grazing Horses at Night. The Horse, Topics, Pastures: Aug3, 2022.
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