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馬の高齢出産では子馬の競走成績が落ちる?

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高齢の繁殖牝馬から生まれた子馬は、競走馬としてのレース成績が低くなるのでしょうか?

この研究論文では、サラブレッドの繁殖牝馬の年齢と、生まれた子馬の競走成績に相関があるかを検討するため、2001~2010年に生まれてJRA登録されたサラブレッド17,885頭を対象にして、牝馬と種牡馬の年齢や平均獲得賞金指数、および、その子馬の勝利数との関連性が解析されました。

参考文献:
Sota Inoue. Influence of broodmare aging on its offspring's racing performance. PLoS One. 2022 Jul 21;17(7):e0271535.

結果としては、高齢の牝馬から生まれた子馬ほど、競走成績が有意に劣っていましたが(未勝利になる割合が有意に高く、また、2勝以上する割合は有意に低い)、その一方で、高齢な牝馬ほど、種牡馬の獲得賞金が高い傾向が見られました。このため、一般化線形混合モデルを用いて解析したところ、種牡馬の獲得賞金が高いほど、子馬の競走成績が優れているという結果が示され、このモデルにおいては、牝馬や種牡馬の年齢は、子馬の競走成績とは関連していませんでした。このため、子馬の競走成績は、牝馬の年齢とは関係ない(関連性は無視できるか非常に限定的であった)ことが判明し、つまり、有力な種牡馬(獲得賞金の高かった牡馬)との間で生まれた子馬であれば、優れた競走成績を収められることが示唆されました。

残念ながら、この研究では、競走馬登録された馬のみを調査対象としているため、デビュー前に淘汰された子馬の割合は不明でした。また、高齢牝馬ほど競走能力が落ちるという経験則があったとすると、馬主や調教師が種牡馬を選択するときにバイアスが働いた可能性も否定できません。同様に、高齢な牝馬ほど早期胚死滅や流産、子馬の健康問題が多いという傾向はよく知られていますので、そのような牝馬に対しては、種付け料の高額な有力種牡馬はあまり選ばれなかった、という現象が起こったのかもしれません。なお、海外の研究では、高齢な牝馬から生まれた子馬ほど、実際の競走成績が劣るというデータも示されています。

ですので、今後の検証では、牝馬の高齢出産と子馬の能力のあいだに相関があるのか、そして、その場合のメカニズムについて精査するべきだと考察されています。ただ、競走馬の繁殖というビジネスの側面を考えると、種牡馬を無作為に割り当てたり、参加するレースを選択するときのバイアス等を全て排除するのは不可能であるため、純粋な生物学的が意味での、高齢出産の影響を証明するのは難しいのかもしれません。

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